ヘルプマークを見るとイライラするのはなぜ?心理学から考える不公平感

フィルムに入ったヘルプマーク 人間関係

電車の中や街中で「ヘルプマーク」を付けた人を見かけること本当に増えましたよね。

「元気そうに見えるのに、なぜこんなに大勢が特別扱いを求めているのか」 「自分だって毎日嫌な思いに耐えていて、クタクタなのに…」
ふと胸の奥に、そんな「イライラ」や「モヤモヤ」が湧き上がってきた経験はありませんか?

そんな感情を抱いてしまった後「助けを求めている人に腹を立てるなんて、自分はなんて出来てない人間なんだろう」と、自己嫌悪に陥ってしまう方も決して少なくありません。

私もそのうちの一人かも。
実際は「言葉や態度に出してはいけない」と感じているだけで、案外多くの人が同じ感情を抱いているかも知れませんよ。

そこで、この記事では、なぜ私たちがそのような感情を抱いてしまうのかを、心理学の視点から丁寧に紐解いて行きます

最後まで読んでいただければ、あなたがヘルプマークに対して感じる感情が「人間として極めて正常な反応」であることがわかり、自分を責める苦しさから解放されるはずです。

イライラするのは、あなたが「冷たい人間だから」ではない

まず結論からお伝えします。

ヘルプマークを見てイライラしてしまうのは、あなたが冷酷だからでも、思いやりが欠けているからでもありません。

それは、あなた自身が心身ともにギリギリに近い状態で社会を生き抜いているからです。
あなたは立派ですよ。

心理学的に見ると、このイライラは「これ以上、自分の心のエネルギーを奪わないでほしい」という、あなた自身の脳が発する防衛本能(SOS)そのものです。

真面目で、周囲の空気を読み、普段から気を張って生きている人ほど、この防衛本能は強く働きます。

知らず知らずのうちに、家族にも職場でも、沢山のエネルギーを使っていませんか?

そんな中、「ヘルプマークを付けている知らない人」にまで気がつくあなたは、本当にやさしい人です。

でも、エネルギーは無限にはありませんよね。
これ以上、エネルギーを奪わないでほしい
それは、当たり前の反応です。

あなたの困っている人を助けるべきと考える理性と、自分自身を守りたいという本能がぶつかり合うからこそ、
その葛藤が「苛立ち」という感情に変換されてしまうのですね。

それは、本当に冷たい人間には起こり得ない現象です。

心理学からひも解く「不公平感」と「心の枯渇」

では、なぜただの赤いマークを見るだけで、私たちの心はこれほどまでに波立つのでしょうか?

急増して、多すぎる。
誰しもが当然の顔で掲げていて、図々しいと感じる。
少し挙動が不自然だが、性格の問題にしか見えない。

などなど、思うところがいろいろあると思いますが、心理学からひも解くと
そこには2つの強力な心理的メカニズムが働いています。

相対的剥奪感|自分ばかりが損をしているという感覚

人は多かれ少なかれ損得勘定を持っています。

例えば「自分と同じような状況に見えるのに、相手だけが得(優遇)をしている」と感じたとき、強い不公平感を抱きます。
これを心理学では「相対的剥奪感」と呼びます。

ヘルプマークを付けている方の中には、内部障害や精神疾患など「外見からは健康に見える」方が多くいます。
外見からは分からない疾患を知らせるための「ヘルプマーク」でもあります。

一方、あなた自身も同様に、外見からは判断できない頭痛や生理痛、人間関係の疲労を抱えながら、必死に健康なふりをして頑張っていませんか?

だから、ヘルプマークをかざしている人は簡単に「配慮される側」に回っているよう見える。

この「私は我慢しているのに、なぜあなたは許されるのか」という無意識の比較が、強烈な不公平感を生み出します。

苦しさや辛さを数値化することが出来ないからこそ、耐えられる器によって差が出てしまうのですね。

認知的資源の枯渇|思いやる余裕の欠如

人間の脳が「他者に配慮する」「空気を読む」ために使えるエネルギー(認知的資源)には、1日あたりの限界があります。

仕事のプレッシャーや満員電車のストレスで、あなたのエネルギーはすでに枯渇状態に陥ってしまったのかも。

そこにヘルプマークという「無言の配慮の要請」が視界に入ると、脳は席を譲るべきかどうかの判断に対して「これ以上のタスクを強要された」と解釈し、
処理しきれずにパニックを起こします。

このパニック状態こそが、あなたを苦しめるイライラやモヤモヤの正体です。

あなたの心が狭いのでも、冷たいのでもありません。
もしかしたら、あなたのすぐ近くにも同じ気持ちを抱えている人がいるかも知れません。

それくらい、誰にだって起こりうる症状といえます。

「無言の圧力」が心のキャパシティを奪う瞬間

それでは、この心理メカニズムが、日常の風景でどのように発動するのかを見てみましょう。

【よくある通勤電車の風景】

残業続きで心身ともにボロボロの金曜日。あなたは運良く電車の座席に座ることができました。「やっと休める」と目を閉じた瞬間、目の前にヘルプマークをカバンに付けた中年女性が立ちました。外見はスマホをいじっており、特には何も問題を抱えていないように見えます。

この瞬間、あなたの脳内では激しいエネルギーの消費が始まります。

  • 「席を譲った方がいいのかな?」というプレッシャー
  • 「でも私も限界だし、相手はスマホを見る元気があるじゃないか」という反発
  • 「もし譲らなかったら、周りから冷たい人だと思われるのでは?」という他者の目への恐怖
  • 「気づかないふりをしよう」と目を閉じることへの罪悪感

ただ目の前に人が立っただけなのに、ヘルプマークというシンボルがあるだけで、
突然あなたはこんなにたくさんの心理的葛藤を強制的に背負わされます。

この「勝手に心のキャパシティを奪われる感覚」こそが、
私たちがヘルプマークを「図々しい」「圧が強い」と感じてしまう決定的な理由です。

あなたの心が疲弊している時、ヘルプマークは「善意のシンボル」ではなく「あなたを責め立てる刃」のように見えてしまうのですね。

お願いだから視界から消えてほしい

そう願ってしまうのは、あなた自身の助けを最優先するべきサインかも知れません。

「ヘルプマーク」に心の境界線を引く処方箋

ヘルプマークへのイライラの正体が「自分自身の枯渇と不公平感」であるならば、私たちが取るべき行動は一つしかありません。

それは「自分を犠牲にしてまで、他人に優しくしようとするのをやめること」です。

明日から、ヘルプマークを見てモヤモヤした時は、以下の3つのマインドセット(心の境界線)を思い出してください。

  1. 私は今、疲れているんだな」と自覚する
    イライラした時は、相手を責めるのではなく、自分の心のバロメーターにしてください。
    「あ、今私は人に優しくできないほど追い詰められているんだ」と、自分自身のSOSを最優先で受け止めてあげましょう。
  2. 「譲る・譲らない」の決定権は自分にあると知る
    ヘルプマークは「配慮を必要としているサイン」であって、「あなたに席を譲れという命令」ではありません。
    あなたがしんどい時は、目を閉じて気づかないふりをして構わないのです。他人に優しくするのは、あなたのコップの水が満ち溢れている時だけで十分ですよ。
  3. 「飛行機の酸素マスク」のルールを思い出す
    飛行機が緊急事態に陥った際、アナウンスでは必ず「まず自分自身に酸素マスクを着け、その後に周囲の人を助けてください」と指示されます。
    自分が酸欠状態(余裕がない状態)で他者を助けようとすれば、共倒れになるからです。

社会も同じです。 自分の心が酸欠状態の時は、まず自分に酸素を与えてください

ヘルプマークを付けている人には、確かに見えない苦しみがあるのでしょう。
しかし、あなたにも「誰にも見せていない苦しみや疲労」が確実にあるはずです。

その見えない自分の傷を、まずは自分自身で気がつき、認めてあげてください。

それに、意外と人は他人を見ていません
あなたが自分を大切にすることに「冷たい人だ」と思ったりしませんよ。

いつも周囲の目が行くのは、親切にした人ばかりではないですか?
それでも、すぐに忘れ去られることでしょう。

なので「ヘルプマークを見てイライラしてしまう自分」を否定せず「それだけ毎日頑張っている証拠だ」と抱きしめることができたとき、
視界に入るヘルプマークは、ただの「景色の一部」へと変わり、あなたの心を乱すことはなくなるはずです。

あなたはもう、十分に頑張っていますよ。
まずは自分の心を、ゆっくり休ませてあげてくださいね。

以下の記事でも、急増したヘルプマークについて書いているので見てみてくださいね!

多すぎる「ヘルプマーク」急増・悪用の実態と実例|モヤモヤ解消法
ヘルプマークを「多すぎ」「元気そうなのに図々しい」「ファッションでは?」と感じてモヤモヤしていませんか?その感覚の正体と、ここ1年で急増した背景、外国人観光客による炎上や悪用の実態を徹底解説。通勤のストレスを減らし、心をスッキリさせるための向き合い方をご紹介します。